沿革と研究の目的


 1958年1月に、大阪大学文学部心理学研究室が、岡山県真庭郡勝山町(現在、真庭市)と協力して、同町の神庭の滝周辺に生息する野生ニホンザルの餌付けに着手しました。同年3月には餌付けが完成し、餌付けされた勝山ニホンザル集団のすべての個体を識別したうえで命名し、データの収集を開始しました。

 それ以来、現在にいたるまで、勝山集団で誕生し、成長する個体のすべてを識別し、個体間の相互作用や社会関係、さらには分裂などの集団の歴史を記録、分析し、多くの成果を上げてきました。50年以上にわたり個体識別に基づく継続研究が行われているサル集団は世界的にも類まれであり、勝山集団の研究を続けることで、今後とも貴重な資料が得られることが期待されます。

 1965年5月に、神庭の滝自然公園内に大阪大学比較行動学勝山第1実験所が、1972年3月には、勝山町城山に同第2実験所が設立されました。さらに、1975年2月、人間科学部の吹田キャンパスへの移転に伴い、ニホンザルを対象とした実験的研究の環境として行動実験観察棟が竣工し、1980年4月に、大阪大学人間科学部附属比較行動実験施設が設置されました。その後の大学院研究科の整備に伴い、これらの施設は大阪大学大学院人間科学研究科の附属施設となり、現在にいたっています。

 このように、霊長類の行動研究を総合的に推進し、この研究が人間理解に貢献することを目指して、比較行動学研究分野と協力して展開しています。